患者さまへ

教授からのメッセージ

患者さまの病態にあった治療薬を選択することで、最大限の治療効果をあげられるように努めています。

教授からのメッセージ

膠原病とは?

「膠原病」とは、皮膚や関節、筋肉などの結合組織(collagen tissue)に炎症がおきる病気という意味で、「膠原(こうげん)」はコラーゲンの当て字から来ています。別の呼び方として「リウマチ性疾患」と呼ばれることもありますが、この「リウマチ」とは、ギリシャ語で「流れる」(痛みの原因となる悪い液体が体のあちこちを流れる)という意味から来ております。

「膠原病」あるいは「リウマチ性疾患」は、本来自分の体を守るべき免疫システムが自分の組織を攻撃してしまう病気で「自己免疫疾患」の一つです。「自己免疫疾患」の中には、膠原病のように全身の臓器に病気がおきる「全身性自己免疫疾患」と、1型糖尿病やバセドウ病などのようにある特定の組織にだけ病気がおきる「臓器特異的自己免疫疾患」とがあります。「膠原病」「リウマチ性疾患」「全身性自己免疫疾患」の3つはお互いに重なり合っており、当科が扱う関節リウマチやSLEなどの病気は「膠原病」かつ「リウマチ性疾患」かつ「全身性自己免疫疾患」です。関節リウマチも代表的な「膠原病」の一つですが、症状が関節に局在していることが多いため、「関節リウマチと膠原病」のように狭義の膠原病と別に扱われる場合もあります。

膠原病がなぜ起きるのか、ということはまだ十分には分かっていませんが、遺伝因子と環境因子が複雑に組み合わさっておきる病気であることが知られています。例えば、遺伝情報が同じ一卵性の双生児であっても、同一の膠原病を発症する確率は通常10%未満です。すなわち膠原病は遺伝病ではありません。しかし、血縁に膠原病の家族歴のある方はない方と比べて膠原病を発症する確率が少し高くなることが知られていますので、遺伝子の影響も受けています。ではなぜ同じ遺伝子を持った人が膠原病を発症したりしなかったりするかというと、環境因子が重要であると考えられています。環境因子としてウイルス感染や喫煙、女性ホルモン、腸内細菌などの関与が報告されています。

膠原病の素因をもった方が、ウイルス感染などをきっかけに実際に膠原病を発症することがあります。免疫系が攻撃対象を決めるのは白血球の型(human leukocyte antigen: HLA)によって決まります。感染微生物とHLAとはカギとカギ穴のような関係にあり、この2つがぴったりとはまった時に免疫系は攻撃を開始します。特定のウイルスなどの感染微生物と自己組織の構造がよく似ていてぴったりとはまるHLAの型をもっている人は、その感染症にかかったときにだけ免疫系が自己組織に対しても攻撃を開始してしまう可能性があるわけです。これまで健康だった人が突然膠原病を発症したり、落ち着いていた膠原病が急に悪化したりすることがあるのはこのためかもしれません。

膠原病の治療薬のご紹介

膠原病とは、活性化した自分の免疫系が自分の体の組織を攻撃してしまう病気のため、それを抑える治療薬は、必然的に自身の免疫力をも抑えてしまうことに注意が必要です。膠原病の治療薬には大きく分けて「ステロイド」と「抗リウマチ薬」があります。ここではステロイドと抗リウマチ薬の特徴と使われ方について説明します。

ステロイド

ステロイドは、膠原病の代表的な治療薬です。様々な抗リウマチ薬が開発された現在においても、急性期はステロイドでしかコントロールできない病態がたくさんあります。ステロイドの使い方として、最初はその病態にあった十分量を使用する必要があり、その後再燃がないことを見極めながらゆっくりと減量していく必要があります。ステロイドの使用を全くやめてしまうと再燃が多くなることも知られていますので、個々人の病状に合わせて病気が落ち着いたままの状態を維持できる最低限のステロイド量を探していくことになります。後述する「抗リウマチ薬」を使用することで、維持するステロイド量を減らすことができ、場合によっては中止できる患者さまも一部におられます。

なお、ステロイドの使用量は「病名」によって決まるものではなく「病態」によって決まるものだということにも注意が必要です。「膠原病」と診断されたからといって、必ずステロイドを使用しなければいけないわけではありません。膠原病の病気の症状の中に、ステロイドが効く病態とそうでない病態とがあり、効く病態に対してはステロイドを使用する必要があるということです。

抗リウマチ薬

膠原病の病気の進行を抑制するステロイド以外の薬剤を総称して「抗リウマチ薬」と呼びます。抗リウマチ薬を積極的に併用することで病気が安定化し、ステロイドを減らしても病気が再燃しにくくなることがわかっています。

抗リウマチ薬には、免疫力を弱める「免疫抑制薬」と免疫力を弱めない「免疫調整薬」があります。一般的には、重篤な病態には「免疫抑制薬」が、比較的軽度の病態には「免疫調整薬」が使用されることが多いです。また、最近の「抗リウマチ薬」の中には、病気にかかわる特定の分子だけを標的とし他の分子にあまり影響を与えないようにつくられた「分子標的薬」があり、目覚ましい治療効果をあげつつあります。分子標的薬の中に、生体内の「抗体」という分子を模した蛋白質でつくられた「生物学的製剤」と、低分子化合物で作られた「標的型低分子抗リウマチ薬」があります。関節リウマチの治療につかわれるTNF阻害薬、IL-6阻害薬、T細胞共刺激分子阻害薬など注射・点滴製剤は「生物学的製剤」で、JAK阻害薬などの内服薬は「標的型低分子抗リウマチ薬」です。現在、SLEや血管炎などでも様々な生物学的製剤や標的型低分子抗リウマチ薬が開発されており、徐々に使えるようになってきています。

ここでは、現在使用可能は「抗リウマチ薬」とその適応病名・適応病態をお示しします。

現在使用可能な「抗リウマチ薬」と適応病名・適応病態

免疫抑制薬

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一般名 商品名 作用機序 主な適応症(2021年2月現在)
アザチオプリン イムラン・アザニン プリン拮抗薬 SLE・全身性血管炎・多発性筋炎・皮膚筋炎・強皮症・MCTD・血管炎を伴う難治性リウマチ性疾患・自己免疫性肝炎
シクロホスファミド エンドキサン アルキル化薬 SLE・全身性血管炎・多発性筋炎・皮膚筋炎・強皮症・MCTD・血管炎を伴う難治性リウマチ性疾患
メトトレキサート リウマトレックス 葉酸拮抗薬 関節リウマチ・関節症性乾癬・若年性特発性関節炎
ミゾリビン ブレディニン 代謝拮抗薬 関節リウマチ・ループス腎炎・ネフローゼ症候群
ミコフェノール酸
モフェチル
セルセプト DNA合成阻害 ループス腎炎・臓器移植後
シクロスポリン ネオーラル・
サンディミュン
カルシニューリン阻害薬 ネフローゼ症候群、ベーチェット病に伴うブドウ膜炎・関節症性乾癬・臓器移植後など
タクロリムス プログラフ カルシニューリン阻害薬 関節リウマチ・ループス腎炎・多発性筋炎・皮膚筋炎に伴う間質性肺炎・臓器移植後など
レフルノミド アラバ 核酸合成阻害 関節リウマチ
免疫調整薬

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一般名 商品名 作用機序 主な適応症(2021年2月現在)
サラゾスルファピリジン アザルフィジン T細胞・マクロファージの抑制 関節リウマチ
ブシラミン リマチル T細胞の抑制 関節リウマチ
イグラチモド ケアラム・コルベット B細胞・マクロファージの抑制 関節リウマチ
D-ぺニシラミン メタルカプターゼ T細胞の抑制 関節リウマチ・Wilson病・鉛中毒など
アクタリット オークル、モーバー T細胞の抑制 関節リウマチ
金チオリンゴ酸
ナトリウム
シオゾール B細胞の抑制 関節リウマチ
ヒドロキシクロロキン プラケニル リソソーム機能阻害・
TLR9の活性化阻害
皮膚エリテマトーデス・全身性エリテマトーデス(SLE)
生物学的製剤

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一般名 商品名 作用機序 主な適応症(2021年2月現在)
インフリキシマブ レミケード TNF阻害薬 関節リウマチ・ベーチェット病に伴うブドウ膜炎・腸管型・神経型・血管型ベーチェット病・関節症性乾癬・強直性脊椎炎・潰瘍性大腸炎・Crohn病
エタネルセプト エンブレル TNF阻害薬 関節リウマチ・若年性特発性関節炎
アダリムマブ ヒュミラ TNF阻害薬 関節リウマチ・若年性特発性関節炎・関節症性乾癬・強直性脊椎炎・腸管型ベーチェット病・潰瘍性大腸炎・Crohn病・ブドウ膜炎
ゴリムマブ シンポニー TNF阻害薬 関節リウマチ・潰瘍性大腸炎
セルトリズマブペゴル シムジア TNF阻害薬 関節リウマチ・関節症性乾癬
トシリズマブ アクテムラ IL-6受容体抗体 関節リウマチ・Castleman病・高安動脈炎・巨細胞性動脈炎・成人スチル病・若年性特発性関節炎・CART療法に伴うサイトカイン放出症候群
サリルマブ ケブザラ IL-6受容体抗体 関節リウマチ
アバタセプト オレンシア T細胞機能調節薬 関節リウマチ・若年性特発性関節炎
リツキシマブ リツキサン CD20抗体・B細胞除去 GPA・MPA・ネフローゼ症候群・ITP・TTP・B細胞性リンパ腫
ベリムマブ ベンリスタ BLyS・BAFF阻害 SLE
メポリズマブ ヌーカラ 抗IL-5抗体 EGPA・気管支喘息
カナキヌマブ イラリス 抗IL-1b抗体 家族性地中海熱・全身型若年性特発性関節炎・クリオピリン関連周期性症候群・高IgD症候群・TNF受容体関連周期性症候群
JAK阻害薬

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一般名 商品名 作用機序 主な適応症(2021年2月現在)
トファシチニブ ゼルヤンツ JAK1/3阻害 関節リウマチ・潰瘍性大腸炎
バリシチニブ オルミエント JAK1/2阻害 関節リウマチ・アトピー性皮膚炎
ペフィシチニブ スマイラフ Pan-JAK阻害 関節リウマチ
ウパダシチニブ リンヴォック JAK1阻害 関節リウマチ
フィルゴチニブ ジセレカ JAK1阻害 関節リウマチ
その他

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一般名 商品名 作用機序 主な適応症(2021年2月現在)
ニンテダニブ オフェブ チロシンキナーゼ阻害薬 全身性強皮症に伴う間質性肺疾患・進行性線維化を伴う間質性肺疾患・特発性肺線維症

研究協力のお願い

抗リウマチ薬は、何年にもわたる基礎研究の末に生み出され、その後に厳しい臨床試験をくぐりぬけてようやく使えるようになった貴重な薬剤です。しかし、臨床試験は限られた条件を満たした一部の患者さまに効くことが示されただけで、多様な疾患背景をもつ実際の患者さまでとうか、ということは、実際の患者さまの臨床データをもとに調べていく必要があります。また、そのような臨床データを集積することで、その薬がどのような特徴をもった患者さまに最もよく効くのか、などを明らかにすることができます。そのため当科では、当科を受診した患者さまの臨床データをデータベースに登録し、様々な研究に活用させていただいております。データは個人情報とは切り離して管理しますので、そのことで患者さま個々人のプライバシーが明らかになることはありません。また、同意をいただける患者さまからは、血液や遺伝子、腸内細菌叢などの臨床サンプルを採取させていただきます。それぞれの研究は、当院の倫理委員会や利益相反審査委員会で厳しく審査され、承認を受けたものになります。将来の膠原病診療をよくするための研究になりますので、もし同意をいただける場合はぜひご協力をどうぞよろしくお願いいたします。

以下には当科が行っている治験・臨床研究をご紹介させていただきます。

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