医学生・研修医の皆さまへ

教授からのメッセージ

膠原病診療は、臨床も研究も大変奥が深い学問です。ぜひ一緒に仕事をしましょう。

教授からのメッセージ

膠原病内科医になろう!

“免疫学”は最先端の学問!

「免疫学」は最先端の学問です。例えば、生体が備えている「抗体」という蛋白質を模してつくられたTNF阻害薬などの「生物学的製剤」が、初めてヒトの患者さまに試みられたのは関節リウマチです。関節リウマチにおけるTNF阻害薬の劇的な成功が他の分野にも波及し、例えば癌の分野で使われているPD-1阻害薬などの成功につながってきました。現在はさらに、経口投与が可能な低分子の分子標的薬も続々と開発されています。膠原病を専門とすることで、このような時代の最先端の「免疫学」の進歩を肌身で感じることができるでしょう。

“免疫学”は最先端の学問!

“リウマチ膠原病学”は面白い!

膠原病では全身の様々な臓器に症状がおこります。一見関係なさそうにみえる別々の臓器の症状が裏でつながっていたりして、実に奥深い学問です。全身の所見をくまなくとる総合内科的な力に加え、さらに「免疫」という生体の不思議な仕組みを考えながら病態を考えていく面白さがあります。免疫学の最先端の研究の結果として開発された画期的な治療薬を使いこなし、患者さまをよくすることができることは、医師として非常にやりがいのある仕事です。

世界一幸せな“膠原病内科医”になろう!

医師として患者さまの幸せを考えるのは当然のことですが、医師自身も「幸せ」な人生を送らなければいけません。リウマチ膠原病を専門とする医師は、各種専門の中でも「幸福度」が高いということが各種統計で示されています(1)。その理由は様々と思いますが、ワークライフバランスが適度であることに加え、最先端の治療薬を使いこなすことができ医師としての充実感を感じることができるからかもしれません。皆さんもぜひ膠原病内科医になって活躍してみませんか?

参考文献 (1)Martin KL. Medscape physician lifestyle and happiness report 2019. Medscape. 2019

臨床研究をしよう!

論文の“批判的吟味”ができるようになる!

皆さんは、論文に書いてあると、すべてが本当のことだと思っていませんか?しかし、信頼性が最も高いとされているランダム化比較試験(RCT)であっても、ある特定の条件下で成り立つ一面の真実でしかありません。そのことを痛烈に指摘した論文が、世界的に有名な医学雑誌BMJのクリスマス特集号に載っていますので紹介します。

この研究では、「パラシュートの使用が、航空機から飛び降りた際に死や重大損傷を抑制できるか?」について検討しました。18歳以上の男女23人をランダムに割り付け、片方は飛行機から「パラシュートをつけて」飛び降り、もう片方には「単なるリュックサックを担いで」飛行機から飛び降りました。しかし、飛び降りた後の着地後に、死や重大損傷に至った人はパラシュート群0人、リュックサック群0人で有意差は認められませんでした。何か間違っていませんか?

そうです。この研究の参加者が乗っていたのは、「飛んでいない」飛行機だったのです。このように、たとえRCTであっても研究の前提条件でいかようにも結論を導き出せるので、その内容を“批判的に吟味”していくことが必要です。臨床研究を自分で行った経験があると、論文に書いてあることの限界や問題点も含めて正しく解釈できるようになります。

参考論文 BMJ 2018; 363: K5094

論文の“批判的吟味”ができるようになる!

臨床医の実感を証明することができる!

臨床研究では、日々臨床医として働いているときに感じる“臨床的疑問”が研究のスタートとなります。たとえば関節リウマチの患者さまは「天気が悪い時には関節も痛む」と訴えることが多いと感じたとします。そうしますと、気象庁がホームぺージで公開している各都市の気象統計(気圧、気温、湿度)のデータを公開していますので、それとリウマチ患者さまの関節症状のデータを結合して解析することで、その相関を検討することができます(1)。研究の結果、関節症状と「気圧」との間には有意な負の相関(気圧が低くなると関節症状が悪化する患者さまが多い)が認められることが分かりました(1)。この研究はいわゆる「気象病」とよばれる現象(天気の悪い日に痛みを伴う疾患の症状が悪化する)に統計学的な根拠があることを示した仕事になります。このように、臨床研究を行うためには、日常臨床における疑問を大事にし、一つ一つの症例を丁寧に診ていくことが重要です。

参考文献
(1)Terao C, Hashimoto M et al. PLOS ONE 2014

リウマチの関節症状と気圧の関係

臨床医の実感を証明することができる!

関節症状と気圧との相関を示したグラフです。〇が一人一人の患者さまを示し、横軸はそれぞれの患者さまにおける関節症状と気圧との間の相関係数、縦軸はP値を示します。グラフの左側の患者さまでは、気圧と関節症状が負に相関(気圧が上がると関節症状が悪化)し、下のほうの患者さまは個人の中でその相関が強いということになります。もし気圧と関節症状に全く関係がなければ、このグラフは左右対称な富士山の形になるはずですが、左のすそ野が濃いことから「気圧が下がると関節症状が悪化する」患者さまが多いということが分かります。

臨床研究をとおして人とつながることができる!

基礎研究では新しい知見を「最初に」報告することが重視され、2番手になるとあまり評価されませんが、臨床研究では必ずしもそうはなりません。一つのコホート(患者集団)で示されたことが患者背景の異なる別のコホートでも証明されることは非常に重要なことですし、2番目の研究のほうが研究デザインがしっかりしていて患者数も多い場合、2番目の研究のほうが将来多く引用されることすらありえます。従って臨床研究では、多くの先生方と協力できることが強みになります。他人と競争すること苦手だけれども協調性には自信があるという方は、臨床研究が向いているかもしれません。

当科では、関西多施設ANSWERコホートをはじめとして、様々な大学の先生方と交流しながら臨床研究をすすめていくことができます。あなたも同世代の先生方と切磋琢磨しながら臨床研究をしてみませんか?

基礎研究(イメージ)

臨床研究(イメージ)

基礎研究をしよう!

病態をより深く理解できるようになる!

基礎研究を行うことによって、膠原病の“病態”がより深く理解できるようになります。例えば、自己免疫を防ぐために生体にそもそも備わっているシステムとして坂口志文先生が発見した制御性T細胞(Treg)というものがあります。Tregは免疫システムの活性化を抑えますので、自己免疫の防ぐためには有利に働きますが、感染症を排除するためには不利に働く可能性があります。例えば、SLEではTregの数が減少していることが知られていますが(1)、動物モデルを用いた実験でTregが減少するとマラリア感染からの生存には有利になることが示されています。また、アフリカのマラリア抵抗性の部族ではTregの機能低下が報告されています(2、3)。はるかな昔、人類の祖先がアフリカから世界へ拡散していく際に、マラリアの感染から生き延びるためには有利であった「Tregの働きが弱い」という体質が、現代では逆に自己免疫疾患の発症に対して不利に働いているのかもしれません。マラリアとSLEの病態は非常に似通っており、マラリアに効く薬がSLEにも有効であるのも興味深い点です。このように、基礎研究を行うことで病気の成り立ちや背景をより深く理解できるようになります。

参考文献(1)Immunity. 2009 ;30:899.

参考文献(2)Nat Med 2017; 23: 1220.

参考文献(3)PNAS 2008;105:646.

参考文献
(1)Immunity. 2009 ;30:899.
(2)Nat Med 2017; 23: 1220.
(3)PNAS 2008;105:646.

病態を考えた治療を提案できるようになる!

現在は、生物学的製剤などの分子標的薬が使用できるようになって、薬剤の患者さまへの効き方からその疾患の病態を逆に考えることができるような時代になってきています(1)。もしあなたが自分で基礎実験を行った経験があると、それぞれの薬がターゲットとしている分子や作用している細胞の働きがよく理解できますので、なぜその薬剤が特定の病態に効きやすく逆に特定の病態に効きにくいのか、ということを根拠をもって考えることができるようになります。例えば、図は関節リウマチと脊椎関節炎(乾癬性関節炎や強直性脊椎炎など)で生物学的製剤の奏効性が異なることを示したものですが、基礎研究の経験がありそれぞれのサイトカインの発現を操作した動物の表現型を知っていれば(2〜4)、なぜそうなるか理解するのは容易なことです。このように、基礎研究を行うことは臨床能力を高めることにもつながります。

生物学的製剤の奏効性から考えるリウマチ性疾患の病態

生物学的製剤の奏効性から考えるリウマチ性疾患の病態01

生物学的製剤の奏効性から考えるリウマチ性疾患の病態02

  • 参考文献(1)Nat Med 2013; 19: 822 
    (2)Ann Rheum Dis 2015; 74: 1284 
    (3)Arthritis Rheum 2012; 64: 2211
    (4)Nat Immunol. 2007; 8: 630

自分にあった道を“究める”ことができる!

基礎研究は山登りに似ています。頂上に行くためには、遺伝子や動物モデルなどいくつもの登り口がありますので、自分にあった道を進んでいくとよいでしょう。山登りですから、時には思っていた仮説と異なる結果がでて何日も道をさまよい歩くこともあります。しかし、そうして苦労して頂上にたどり着いた時の喜びはひとしおです。そして、頂上で別のアプローチを登ってきた研究者と出会うこともあります。そのような時は自分の発見が間違いでなかったことに確信をもてますし、お互いの苦労を喜びをともに感じ取ることができます。長い人生の一時期に、このような研究生活を一度は経験してみませんか?

自分にあった道を“究める”ことができる!

異なる研究手法から同じ治療標的にたどり着いた例

異なる研究手法から同じ治療標的にたどり着いた例01

異なる研究手法から同じ治療標的にたどり着いた例02

参考文献
(1)Okada et al, Nature 2014 
(2)Kohsaka, et al. Nature Medicine 1999

この研究では、ヒトゲノムの解析と臨床サンプルを使った研究から、期せずして同一の治療標的にたどりつきました。左の研究では、ヒトゲノムの解析から、現在は抗がん剤として使用されているサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害薬が関節リウマチに対して奏功する可能性を示しました(1)。一方、右の研究では、滑膜細胞の培養実験からCDKの阻害が滑膜細胞の増殖抑制に有用であることを示しました(2)。ヒトゲノム研究と臨床サンプルを用いた研究という全く別のアプローチから、同じ治療標的にたどり着いたのです。

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